喜怒哀楽記

喜・怒・哀・楽・を順番にテーマにして雑記書いていきます。

【哀】触れる

叔父さん(私のお母さんの弟)が亡くなった時。

 

病院で看取られて、とかっていう最期じゃなくて。

ひとり暮らししてた部屋で死んでたのを、何日も経って発見されて。

 

「変死」扱いで、警察が現場検証に来て、それで検死のために警察署に遺体が運ばれていった。

遺体を運ぶのって、すっごいフツーの、それも建築資材運ぶよーな汚いトラックなんだよね。

警察の、ってぜんぜんわからない、緑の幌がかけられたやつ。

 

発見したのは私。

叔父さんとぜんぜん連絡とれない、って叔父さんの仕事関係の人も様子見にきてて、そのおじさんも警察署で私のお母さんがくるの、一緒に待ってくれた。

 

叔父さんは海外生活が長かったから、お母さんたちはあまり、さいきんの叔父さんの交流関係ってわかってなかった。

それで、叔父さんの携帯見て、お母さんが知ってる叔父さんの友だちの人に知らせて、その人からパーッと訃報が広まって、それですごいたくさんの人が葬儀にきてた。

 

すっごい真夜中に検死が終わって。

それから、お祖母ちゃんとかが手配した葬儀屋さんが遺体を引き取りにきて。

 

お祖父ちゃんの家の代々のお墓があるお寺に運ばれて、そこでお通夜と葬儀をやった。

 

お通夜は何人かの叔父さんの友人や知人が来て、でもその人たちが帰ってから、その夜は私たち遺族はみんな、お寺に泊まった。

 

その時、叔父さんの親しい友人、って自己紹介した男の人が、お通夜の晩、ずっといさせてほしい、っていって残った。

 

その人の布団も用意されたけど、その人はぜんぜん寝なかった。

私が夜中、トイレに行って、それから叔父さんの棺のとこに行ってみたら、その人が棺に顔伏せて、声をださないで泣いてた。

 

その人はずっと、棺をさするよーに触ってた。

 

葬儀の時は、その人は目立たないとこに立ってた。

叔父さんのこと、大好きな人が多かったから、すごいいろんな人たちが来て、昔からの親友とかそーいう人たちは、ずっとお祖母ちゃんやお母さんたちのそばにいて。

 

でも、夜中ずっと棺のとこで泣いてた人は、だれからも離れたとこに立ってただけだった。

 

その人は火葬場にも来た。

火葬がすんで、骨壺に入った叔父さんをお祖母ちゃんが持って、それで遺族以外の人はみんなそれぞれ帰ろーとした時。

 

ひとりひとり、お祖母ちゃんに挨拶して、その男の人もフツーの挨拶をして頭下げて、一度タクシー乗り場に行こーとした。

でも、その足とめて。

 

それから、

「最後に、いーですか」

って、お祖母ちゃんに言って、それから、その叔父さんの骨壺がはいった箱を抱くよーにして触った。

お祖母ちゃんが、その人に骨箱を渡してあげたら、その人はそれ抱いて、そこに顔伏せて、しばらく動かなかった。

 

それから、それをお祖母ちゃんに返して、黙って帰ってった。

 

お祖母ちゃんが、その人がタクシーに乗ってから、

「あの人、※※(叔父さんの名前)の恋人なんだね」

って言った。

 

私の叔父さんは性的マイノリティで、でもそれはお祖母ちゃんには叔父さんは言ってなかった。

 

だけど、わかってたんだね。

それで、その男の人が、叔父さんの恋人、ってお祖母ちゃんにはわかったんだね。

 

私は、お通夜の時、その人が棺をずっと触ってたから、叔父さんの彼氏なんだろーなー、って思った。

人がいるところではずっと目立たないとこにいたけど。

でも、最後、叔父さんのお骨に手で触れたのは、その人だけだった。

 

静かな愛で、静かな哀しみ。

 

叔父さんに触れるその人の手に、そんなこと、感じた。

 

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